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最高裁判所第一小法廷 昭和22年(オ)28号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人寺山馨代理人弁護士安藤国次上告理由について。

自由刑に関する刑の執行猶予は短期自由刑の現実執行に伴う弊害を避けるため有罪判決において刑の言渡と同時に一定期間(一年以上五年以下)その刑の執行を猶予する言渡、すなわち刑の執行を停止する言渡をなしその猶予の言渡を取消されることなくしてその猶予の期間を経過するときは、刑の言渡はその効力を失ひ無罪の言渡ありたると同一の効果を生ぜしめるものである。それ故刑の執行猶予の言渡を受けた者はその猶予期間内は刑の執行を停止されるけれども、刑の言渡は依然としてその効力を有し、若しその期間中に猶予の言渡を取消されるときはその時から新に言渡刑の執行を受くべき不安定の状態に在るものである。従つて猶予の言渡を取消さるることなくして猶予期間を経過する迄は刑の執行を受けることがなくなるとは言い得ないから執行猶予中の者は地方自治法第二〇条にいわゆる「その執行を受けることがなくなるまでの者」に該当するのである。原判決の説示は妥当でないけれどもその趣旨とするところは同一結論に帰着するから本件上告は理由がない。

よつて民訴第四〇一条、第九五条、第八九条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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